2020年 ベストアルバム10選

ベストアルバムのブログを書くのも今年で3回目、2020年もたくさんの素晴らしい音楽のなかで特に思い入れのある10作品を選びました。

 

West of Eden-HMLTD

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HMLTDのこのアルバムなくして2020年は語れません。数え切れないほど聴いているけれど、いつ聴いても新鮮な気分で聴くことのできるアルバムです。

West of Edenはアルバムとしての構成がパーフェクト。一曲目のThe West Is Deadでふつふつと湧き上がるような高揚感を感じ、To the Doorで一回爆発して、Mikey's Songの甘酸っぱい青春のメロディに包まれて、Where's Joanna?の謎めいた旋律でさらに爆発して、最後はWar Is Loomingの切ないギターの音色と歌声に酔いしれる。前のブログでも書いたけれど、アルバムを通して聴くとまるで演劇を一本観たかのような、ストーリー性のある実によく出来たアルバムだと思います。

特にWhere's Joanna?は大好きな曲で聴くと電撃のような、身体中でほとばしる熱狂を感じます。生で聴いたらそれはそれは最高なんだろうなぁ…

 

Collector-Disq

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こちらも今年繰り返し聴きつづけたアルバムです。Disqはウィスコンシン州マディソンを拠点に活動する5人組ロック・バンド。このアルバムがデビュー作になります。

わたしは若者特有のやるせなさや悶々とした感情を掬い取った、でも捻くれすぎない音楽がとても好きで、Disqの音楽はまさにわたしの好みど真ん中でした。若者の突拍子のなさ、疾走感、諦め、衝動、不安定さ、すべて詰めこんだアルバム!思うままにギターをかき鳴らしたぶっきらぼうな音が聴いていて気持ちいい。変にかっこつけていない歌声も等身大で好き。

中でもLonelinessは胸をきゅっと締め付けるような切なさと強さを同時に感じる、大好きな曲。終盤のボーカルの叫びからギターのソロの流れが、彼らの感情の起伏とリンクしているようでとても美しい…。これからもずっと応援したいバンド。

 

Deep Down Happy-Sports Team

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愛してやまないロンドンのSports Team、1stアルバム。

多幸感に溢れて、愛らしくて、ちょっと暑苦しくて、なんだか泣きたくなっちゃうくらいにキラキラ輝いている曲たち。このアルバムに助けられた人も多いんじゃないかなぁ。少なくともわたしはそうでした。傑作!とにかく聴いてほしい!聴き終わったあとはきっととびきりの笑顔になっているので。


Sports Team - Here's The Thing

MVもとっても可愛いのでぜひ観てね。

 

color theory-Soccer Mommy

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Soccer Mommyについてはこのブログで何度も紹介していますが懲りずに何回でも言います、Soccer Mommyは最高…。

彼女にとって2枚目となるこのアルバムは、彼女の地元アメリカ・ナッシュビルでレコーディングされたそう。

color theoryというタイトルの通り、このアルバムには3つのカラーテーマがあります。悲しみや憂鬱さのブルー、身体的な病気や感情の起伏を表すイエロー、心の闇、虚無感、喪失感のグレー。テーマに沿って曲にはかなり内省的な歌詞が多く見て取れます。メロディーも前作に比べてさらに穏やかに、奥へと向かっています。

しかし彼女の曲からは心の弱さのようなものはあまり感じません。あるのは心の闇や憂鬱を受け入れる強さと、わたしたちの心をそっと撫でるような優しさ。

ギターを引っ提げて、ただそこにある痛みを日常の延長線上で歌い上げるSoccor Mommyは誰よりも強くてかっこいい。

 

Purple Noon-Washed Out

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Washed Outはアメリカ・アトランタを拠点に活動するアーネスト・グリーンによるプロジェクトで、Purple Noonは彼の4thアルバムです。

素敵なジャケットに惹かれて聴いてみたらお気に入りになったアルバム。謂わゆるチル・ミュージックの部類に入ると思うのだけど、軽くて聴きやすいというよりは、音が何層にも重なって複雑なメロディー。Paralyzedのようにとびきりロマンチックな曲もあれば、Time to Walk Awayのようにどことなくミステリアスな曲もある。

夢のようにロマンチックでセンチメンタル、朧げで危うげな音楽は、パステルカラーの空と海をバックに、建物の淵で直立しこちらを見つめるこのジャケットの印象そのもの。夏の終わりにぴったりでよく聴いていました。

 

Cult Survivor-Sofie

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今年出たアルバムの中でもベスト3に入るくらいに好きだったSofieの1stアルバム。元々DJとして活動していたソフィー・ファトゥレッチことSofieのデビューアルバムです。以前はLAを拠点にしていたのですが、ウィーンに拠点を戻してこのアルバムの制作を始めたそうです。

初めて聴いた曲はTry to Reach Meだったのだけど、彼女の少し気怠く、でも力の抜けすぎない絶妙な歌声と異国情緒を感じる湿度高めのメロディ、メランコリックな歌詞のバランスが最高でとても印象的でした。全体を通して聴くとサイケデリックな雰囲気やドリーミーさも感じられる、聴いていて飽きさせることのないアルバムに仕上がっています。

個人的には、ここではないどこかに行きたいのにどこにも行けず、漠然とした不安と閉塞感を感じることの多かった2020年の心情とマッチして、何度も聴いて慰められた作品です。

 

Feel Feelings-Soko

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ブログを書くためにもう一度聴いたらやっぱり良すぎて泣けてしまったSoko、5年ぶりの3rdアルバム。Sokoは音楽のほかにも、モデル/女優として多方面で活躍するアーティストです。

今まで出したアルバムの中で一番の出来だと思います。Being Sad Is Not a CrimeやDon't Tell Me to Smileなど曲のタイトルから分かるように、このアルバムからは自らの痛みを受け入れようとする慰めのメッセージを感じます。今までのような夢見心地な雰囲気とセクシーさは健在のこと、今作ではより愛についての言及が目立ちます。それは自己愛でもあるし、家族や恋人、見知らぬ他人から愛されることでもあります。ひたすらに愛を渇望しているかのように歌う彼女の、愛を探す旅路のような作品です。

 

Gathering Swan-Choir Boy

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ユタ州ソルトレイクシティオルタナティブロックバンドChoir Boyの2ndアルバム。

彼らのアルバムを聴いた瞬間の衝撃は今でもよく覚えています。今年一番印象的だったアルバム。The Smithsを彷彿とさせる伸びやかなボーカルの歌声はたまらなく妖艶で、ダークネスとポップが共存するサウンドは、わたしたちの心の奥に秘められた感情をこれでもかと刺激し、共鳴し合う。

真夜中から夜明けにかけてうっすらと明けていく夜空のような、抒情的な美しさと感動を感じる作品です。ゾンビのようなジャケットや本人たちの奇抜な出立ちからは想像し難いくらいにロマンチックで繊細なアルバムなので、本当にたくさんの人に聴いてほしい…!

 

925-Sorry

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ノース・ロンドン4人組ポストパンクバンドSorryのデビュー・アルバム。デビューアルバムにして素晴らしく完成度の高い、カッコよくてクラっときてしまうような作品に仕上がっています。

Sorryの紡ぐ音は複雑で捉えようがなく、In Unisonの冒頭部分のように、不気味に歪んだメロディーからは不穏さを感じます。しかし同時に、気品に溢れているのがこのアルバムの凄いところ。予測不可能で軋んだサウンドでありながら上品さも感じられるのは、きっと一見乱暴でランダムに聴こえるけれど緻密に計算された音の重なりや展開があるからでしょう。

 

Trash Earthers-Pet Shimmers

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ブリストル出身の7人組オルタナティヴ・ロックバンドPet Shimmers。シューゲイズ・ソロアーティストのOliver Wildeによるニュープロジェクトとして結成されたそうです。Pet Shimmersは勢いよく今年2枚のアルバムを出していて、こちらは10月に出た2枚目の作品。

聴いていると実に色んな音がしてきて、少しチップチューンのようにも感じられる、実験的なサウンド。言うならばサーティーワンのポッピングシャワーを食べているかのような、パチパチと弾けて色んな味が楽しめるあの感じ?たくさんの音が重なり合って変化していく様子が、聴いていて楽しい!

前作はローファイ・ガレージな雰囲気が強かったと思うのだけど、今作でサウンドはさらに上へと開かれて、祝祭的なムードや多幸感を感じます。ハイなムードも切なさも陶酔もすべてないまぜにして詰め込んだアルバムで、聴いた後はなんともいい表せない絶妙な気分になります。これからが楽しみなアーティストです。

 

以上、2020年ベストアルバム10選でした。

2020年は予想もしなかったことが多々あった一年だったけれど、そんな中で音楽に慰められることが本当に多かった一年でした。

そしてShameやBlack Country,New Roadがニューアルバムのリリースを発表するなど、すでに2021年が待ち遠しいです。来年も素敵な音楽にたくさん出会えますように。